忍者ブログ
3日ごとにアンケートトップになった話を、少しずつアップして行きます。 続きが読みたい!と思った話に投票お願いします。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

照りつける日差しが、むき出しの腕と短くした髪から覗く襟足を焦がす。
少年は、こめかみに流れる汗を左腕で軽く拭うと、ふいに止めた足と意識を引き剥がすように大きく一つ深呼吸してから、ペダルに掛けた右足へと力を込めた。
自転車はすぐにスピードに乗って、潮風を切り走り出す。
「しょーがねーなぁ」
なかなか断ち切れない習慣に苦笑を洩らしながら、少年は一人呟く。
「いい加減、女々しい男だな、俺」
エネルギーいっぱいの夏の日差しを受けて、煌めく波へと視線を走らせ、少年はハンドルを握ったまま器用に肩を竦めた。



―――夏になったら泳ぎに来ようね


そう言って笑った彼女は、もうここには居ないのに。

PR
3周年の企画にご参加いただき、ありがとうございました!
お蔭様で、無事企画終了です。
最後までお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
多少なりとも楽しんでいただけましたでしょうか?

この企画ページは今週いっぱいまでの設置といたします。
ページ撤収と同時に、企画SSのほうはNOVVELページのほうへ再録となります。

4年目も今までどおりのんびりだらだらまったり、書いていきたいと思っておりますので、これからもよろしくお願いいたします。
「何?陽子が居なくなった???」
「尚隆がここに居るってことは、一人でどこかに行ったのかなぁ?」
今日は渋々と卓子に向かっていた、雁州国の王尚隆は、本来ならば忠実な下僕で有るはずの延麒六太によってもたらされた情報に、がば!と顔を上げた。
「まさかとは思うが、誰かが―――」
「・・・・どんだけ過保護なんだよ」
六太は呆れた笑いを洩らした。
尚隆を焦らせようと思ってもたらした情報ではあったが、正直ここまで食いついてくるとは思わなかった。
いつもの余裕ぶっこいている尚隆を、ぎゃふんと言わせたかった六太であったが、逆に宥めなければならなくなるとは・・・。
「陽子だって、たまには一人になりたいときもあるかもしれないだろ。子供じゃないんだ。わざわざお前が出張っていく必要は無いだろ」
「薄情なヤツだな。お前は心配じゃないのか!」
「そんな、たかが2~3日姿を見ないからって」
「確かに、俺が2~3日姿が見えないからといって、取り立てて騒ぐ人間はこの城にはおらんだろう。だがな、陽子だぞ?あの生真面目な陽子が3日も仕事を放ったらかして姿をくらますなんて、ありえると思うか?」
「それは・・・・・そうだけど」
「そういうわけだから、六太。後は任せた!」
言うが早いか、尚隆は驚くほどの身軽さで執務室を飛び出していった。
「ちょっ!待てよ尚隆!」
後に残ったのは、山積みの書類。
「後は任せたって・・・・・・っざけんなーーーーー!」
いつだって、尚隆の尻拭いは、半身である六太の、不本意ながら不幸なる重大任務なのである。

「延王さまって」
就寝前の一時。
優しく髪を梳かれながら、心地よさと一日の疲れとで、思わずウトウトしかけた時だった。
最後の日課をこなしながら、鈴は突然言った。
「500年以上も王様をやってきただけあって、いろいろと艶聞も絶えなかったわけじゃない?どう思う?」
「さあ・・・。どうって言われても」
陽子の、何を突然、という心の声が聞こえたのだろう。
鈴は慌てたように、唐突な問いの訳を答えた。
「やっぱり、相手があれほどに魅力のある方だと、不安も多いのかしら、ってちょっと思ったの」
それへ、陽子は苦笑しながら軽く言った。
「あんまり、そういうの考えたこと無かったな」
「まあ!陽子ったら相変わらず暢気なのねぇ」
呆れた声が、頭上から降ってくる。
「だって、姿の見えない、居るか居ないかもわからない相手に嫉妬したって仕方がないじゃないか」
肩を竦めながら、陽子は苦笑とも微笑ともつかぬ笑みを浮かべてみせた。
「まあ・・・そう言われればそうなんだけど」
質問の答えが納得のいくものでは無かったので、紅い絹のような髪をサラサラと梳く鈴の顔には、小さな不満が浮かんでいた。


嫉妬とかそういうのは、良くわからない。
だって、経験したことが無いから。
あの人と想いを交わしてから、先の見えない大きな不安に押しつぶされそうになったことは数あれど、さすがに浮気の心配まではしたことは無かった。
延王が他の誰かに心を移すことなんて、考えたことがなかった。
そんな自分は、やはり暢気なのだろうか。

カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
バーコード
忍者ブログ [PR]

photo byAnghel. 
◎ Template by hanamaru.